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パラインフルエンザウイルス(Human Parainfluenza Virus, HPIV)感染症

[2025.02.23]

 

感染症の概要

パラインフルエンザウイルス(Human Parainfluenza Virus, HPIV)は、風邪のような症状を引き起こすウイルスで、特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人では重症化することがある感染症の原因ウイルスです。インフルエンザウイルスとは異なり、通年で感染が見られますが、特に春や秋に流行しやすい傾向があります。

パラインフルエンザウイルスには**4つの型(HPIV-1~HPIV-4)**があり、それぞれ異なる症状を引き起こします。

  • HPIV-1・HPIV-2:クループ症候群(喉頭炎、気管炎、咽頭炎)を引き起こしやすい
  • HPIV-3:乳幼児の肺炎や細気管支炎の原因となる
  • HPIV-4:比較的軽い症状が多いが、発熱や咳を伴うこともある

感染経路

パラインフルエンザウイルスの感染経路は、飛沫感染接触感染です。

  • 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみで放出されたウイルスを吸い込むことで感染
  • 接触感染:ウイルスが付着した手や物を介して、口・鼻・目に触れることで感染

ウイルスは空気中に漂う飛沫だけでなく、ドアノブやおもちゃ、テーブルなどを介しても感染するため、手洗いや消毒が重要です。潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は2~7日とされています。

症状

パラインフルエンザウイルスの症状は、感染するウイルスの型によって異なります。

  • HPIV-1・HPIV-2(クループ症候群を引き起こすことが多い)

    • 発熱(38~39℃)
    • 乾いた咳
    • 声がかすれる
    • 犬の吠えるような「ケンケン」という咳(クループ咳)
    • 呼吸困難(重症例)
  • HPIV-3(肺炎・細気管支炎を引き起こすことがある)

    • 高熱(38~40℃)
    • 咳、鼻水
    • 息苦しさ(呼吸がゼーゼーする)
    • 食欲低下
  • HPIV-4(比較的軽症)

    • くしゃみ、鼻水
    • 軽度の発熱
    • 軽い咳

主な合併症・注意すべき合併症

  • クループ症候群(喉頭気管炎):気道が狭くなり、呼吸困難を引き起こすことがある
  • 細気管支炎・肺炎:特に乳児や高齢者では、ウイルスが肺に広がり重症化することがある
  • 中耳炎、副鼻腔炎:ウイルス感染後に細菌感染を伴うことがある
  • 喘息の悪化:喘息を持つ人では、ウイルス感染が誘因となり発作が起こることがある

治療

パラインフルエンザウイルスに対する特効薬はなく、対症療法が中心となります。

  • 発熱がある場合:解熱剤(アセトアミノフェンなど)を使用
  • のどの痛み・咳がある場合:加湿を行い、のどを保湿
  • 呼吸困難がある場合:重症例では酸素投与やネブライザー療法が必要

通常、1週間程度で自然に回復しますが、呼吸困難がある場合や症状が悪化する場合は早めに医療機関を受診することが重要です。

療養上注意すべき点

  • 十分な休息をとる:体力回復のために安静にする
  • こまめに水分補給をする:特に発熱時は脱水を防ぐために水分をしっかりと摂る
  • 加湿をする:乾燥を防ぎ、のどや気道の粘膜を保護する
  • 咳エチケットを守る:マスクの着用やティッシュで口を覆う
  • 人との接触を避ける:感染拡大を防ぐため、外出を控える

予防方法・ワクチンの有無

現在、パラインフルエンザウイルスに対するワクチンはありません。そのため、日常的な予防策が重要です。

  • 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前には手をしっかり洗う
  • アルコール消毒:接触感染を防ぐために手指を消毒する
  • 換気を行う:室内の空気を入れ替え、ウイルスの滞留を防ぐ
  • マスクの着用:感染の広がりを防ぐため、特に風邪の流行期にはマスクを使用

パラインフルエンザウイルスは何度も感染する可能性があるため、日常生活での予防が重要です。

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