アデノウイルス感染症
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感染症の概要
アデノウイルス(Adenovirus)は、風邪のような症状から重篤な感染症まで引き起こすウイルスの一種です。特に乳幼児や小児で流行しやすく、眼、呼吸器、消化器など幅広い臓器に感染するのが特徴です。
アデノウイルスは**約50種類以上の型(血清型)**があり、それぞれ異なる病気を引き起こします。例えば、
- 咽頭結膜熱(プール熱)(アデノウイルス3, 4, 7型)
- 流行性角結膜炎(はやり目)(アデノウイルス8, 19, 37型)
- 出血性膀胱炎(アデノウイルス11, 21型)
- 胃腸炎(アデノウイルス40, 41型)
これらの感染症は、学校や幼稚園、プールなどで集団感染を引き起こすことが多く、特に夏季や冬季に流行しやすい傾向があります。
感染経路
アデノウイルスの感染経路は、飛沫感染、接触感染、経口感染の3つです。
- 飛沫感染:咳やくしゃみで放出されたウイルスを吸い込むことで感染。
- 接触感染:ウイルスが付着した手や物を介して、口・鼻・目に触れることで感染。
- 経口感染:ウイルスがついた食べ物や水を摂取することで感染(胃腸炎を引き起こすタイプ)。
アデノウイルスは環境中でも数日から数週間生存でき、プールの水やタオルなどを介して感染することもあるため、注意が必要です。
潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は5~7日と比較的長く、感染力も強いのが特徴です。症状
アデノウイルスの症状は感染する型によって異なりますが、主に以下の病気を引き起こします。
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咽頭結膜熱(プール熱)
- 発熱(39℃前後が3~5日続く)
- 咽頭痛(のどの腫れ)
- 目の充血、結膜炎
- 倦怠感
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流行性角結膜炎(はやり目)
- 目の充血
- 目やに
- 涙が止まらない
- まぶたの腫れ
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胃腸炎
- 下痢、嘔吐
- 発熱
- 腹痛
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肺炎
- 高熱
- 激しい咳
- 呼吸困難
特に小児や高齢者では、アデノウイルスによる肺炎が重篤化することがあるため、注意が必要です。
主な合併症・注意すべき合併症
- 中耳炎や副鼻腔炎:ウイルス感染後に細菌感染が加わり、耳や鼻の炎症を起こすことがある。
- 角膜炎(目の合併症):流行性角結膜炎では角膜に傷ができ、視力障害を引き起こすことがある。
- 肺炎:アデノウイルスが肺に感染すると、重症化することがある。
- 出血性膀胱炎:尿に血が混じる症状が出ることがある。
治療
アデノウイルスに対する特効薬はなく、対症療法が中心となります。
- 発熱がある場合:解熱剤(アセトアミノフェンなど)を使用。
- のどの痛みがある場合:うがいや水分補給を行い、のどを潤す。
- 目の症状がある場合:感染拡大を防ぐため、こすらないようにし、点眼薬を使用する。
- 胃腸炎の場合:水分補給をこまめに行う。
通常、1~2週間程度で自然に回復しますが、高熱が続く場合や症状が悪化する場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
療養上注意すべき点
- 十分な休息をとる:体力回復のために安静にする。
- こまめに水分補給をする:特に発熱時は脱水を防ぐために水分をしっかりと摂る。
- 手洗い・消毒を徹底する:感染拡大を防ぐため、手指衛生を徹底する。
- 目をこすらない:角膜炎を防ぐため、結膜炎の場合は目を触らない。
- タオルの共用を避ける:流行性角結膜炎の場合、タオルや洗面用具を共有しない。
- プールの衛生管理に注意する:咽頭結膜熱(プール熱)の予防のため、塩素消毒を適切に行う。
予防方法・ワクチンの有無
現在、一般向けのアデノウイルスワクチンはありませんが、軍隊などの特定の集団で使用されるワクチンが一部存在します。
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前には手をしっかり洗う。
- アルコール消毒:ウイルスが付着した手指を消毒する。
- マスクの着用:感染の広がりを防ぐため、特に風邪の流行期にはマスクを使用する。
- プールの衛生管理:プール熱の感染を防ぐため、塩素濃度を適切に保つ。
- 目やにを拭いた後は手を洗う:流行性角結膜炎の拡散を防ぐ。
アデノウイルスは長期間環境中に残ることがあるため、特に接触感染を防ぐ対策が重要です。
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