肺炎マイコプラズマ感染
感染症の概要
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、細菌の一種であり、肺炎や気管支炎を引き起こす病原体です。特に学童期の子どもや若年成人で感染が多く、風邪に似た症状から始まり、長引く咳が特徴的です。マイコプラズマは「非定型肺炎(一般的な細菌性肺炎とは異なる特徴を持つ肺炎)」の代表的な原因菌とされています。
肺炎マイコプラズマは細胞壁を持たないため、通常の細菌感染に用いられるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果がありません。そのため、特定の抗菌薬が必要になります。
感染経路
肺炎マイコプラズマは主に飛沫感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみに含まれる病原体を吸い込むことで感染し、人と人との密接な接触で広がります。学校や家庭などの閉鎖空間で流行しやすい傾向があります。
潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は1〜4週間程度と比較的長く、その間に感染が広がる可能性があります。感染者は発症後も長期間にわたって病原体を排出するため、注意が必要です。
症状
肺炎マイコプラズマ感染症の症状は、比較的ゆっくり進行し、軽度の風邪症状から始まることが多いです。以下のような症状がみられます:
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初期症状
- 軽度の発熱(38度未満のことが多い)
- のどの痛み(咽頭炎)
- 鼻水や鼻づまり
- 頭痛や倦怠感
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進行後の症状
- 乾いた咳(長期間続くことが多い)
- 発熱(高熱になることもある)
- 気管支炎や肺炎を発症すると、呼吸困難や胸痛が生じる
- 喘息の悪化(もともと喘息を持っている人)
咳は特に長引くことが特徴的で、治療をしても数週間から数カ月続くことがあります。
主な合併症・注意すべき合併症
肺炎マイコプラズマは多くの場合軽症で回復しますが、以下のような合併症が起こることがあります:
- 肺炎:肺の炎症が進むと、高熱や呼吸困難を伴うことがあります。
- 喘息の悪化:もともと喘息のある人は、感染によって症状が悪化することがあります。
- 胸膜炎:肺の周囲にある膜に炎症が起こると、強い胸の痛みを感じることがあります。
- 中耳炎・副鼻腔炎:細菌が耳や鼻の奥に感染することで炎症を引き起こすことがあります。
- 脳炎や髄膜炎(まれ):非常にまれですが、マイコプラズマが神経系に影響を及ぼすことがあります。
治療
肺炎マイコプラズマは細胞壁を持たないため、通常の抗生物質(ペニシリン系など)は効果がありません。以下の抗菌薬が使用されます:
- マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど):第一選択薬
- テトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリンなど):成人で使用されることがある
- フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシンなど):特定の場合に使用
現在、一部の地域では「マクロライド耐性マイコプラズマ」が増加しており、抗菌薬の効果が低下していることが報告されています。そのため、症状の改善が見られない場合は、他の抗菌薬の使用が検討されます。
療養上注意すべき点
- 十分な休養をとる:無理をせず、体を休めることが大切です。
- 水分補給をする:脱水を防ぐために、こまめに水分を取る。
- 咳エチケットを守る:マスクの着用や咳をする際の配慮を徹底する。
- 手洗いを徹底する:感染拡大を防ぐために、手指の消毒を心がける。
予防方法・ワクチンの有無
肺炎マイコプラズマに対する特定のワクチンは現在ありません。そのため、感染を防ぐためには以下のような対策が推奨されます:
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前には手を洗う。
- 人混みを避ける:流行時期には密閉された空間での長時間の接触を避ける。
- 健康管理を徹底する:免疫力を保つために、十分な睡眠と栄養を取る。
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