RSウイルス感染症
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感染症の概要
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus, RSV)は、乳幼児や高齢者において重篤な呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。特に、生後6か月未満の乳児では細気管支炎や肺炎を引き起こしやすく、入院が必要になることもあります。
RSウイルスは毎年秋から冬にかけて流行しやすく、2歳までにほぼ全ての子どもが一度は感染するとされています。ただし、一度感染しても免疫が完全には獲得されないため、生涯を通じて何度も感染する可能性があります。
感染経路
RSウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染の2つです。
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみによって放出されたウイルスを吸い込むことで感染します。
- 接触感染:ウイルスが付着した手や物(ドアノブ、おもちゃ、衣類など)を介して、口・鼻・目に触れることで感染します。
RSウイルスは環境表面でも数時間生存するため、乳児が使用するおもちゃやベッド周りの消毒が重要です。
潜伏期間(感染から症状が出るまでの期間)は2~8日とされています。症状
RSウイルスの症状は、年齢や基礎疾患の有無によって異なります。
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軽症の場合(風邪のような症状)
- 鼻水、鼻づまり
- 軽い咳
- くしゃみ
- 発熱(37~38℃)
- 食欲低下
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重症化する場合(細気管支炎や肺炎を引き起こすことがある)
- 高熱(38~40℃)
- 強い咳
- 喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)
- 呼吸困難、陥没呼吸(肋骨の間がへこむような呼吸)
- 哺乳不良(乳児)
- チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる)
特に、早産児、心疾患や肺疾患のある乳児、高齢者では重症化する可能性が高いため、注意が必要です。
主な合併症・注意すべき合併症
- 細気管支炎:小児では気道が狭くなり、呼吸が困難になることがあります。
- 肺炎:RSウイルスが肺に広がると、重症化し、酸素供給が不足することがあります。
- 喘息の悪化:喘息を持つ人では、RSウイルス感染が喘息発作を引き起こす可能性があります。
- 中耳炎:細菌の二次感染により発症することがあります。
- 無呼吸発作:特に新生児や未熟児では、呼吸が止まることがあり、入院管理が必要になることがあります。
治療
RSウイルスに対する特効薬はなく、対症療法が中心となります。
- 発熱がある場合:解熱剤(アセトアミノフェンなど)を使用して症状を和らげる。
- 咳がひどい場合:加湿器を使って部屋の湿度を高める。
- 水分補給:脱水を防ぐために十分な水分を摂取する。
- 呼吸が苦しい場合:ネブライザー療法(気管支拡張剤の吸入)や酸素投与が必要になることがあります。
通常、1~2週間程度で自然に回復しますが、呼吸困難がある場合や症状が悪化する場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
療養上注意すべき点
- 十分な休息をとる:体力回復のために安静にする。
- こまめに水分補給をする:特に発熱時は脱水を防ぐために水分をしっかりと摂る。
- 加湿をする:乾燥を防ぎ、のどや気道の粘膜を保護する。
- 咳エチケットを守る:マスクの着用やティッシュで口を覆う。
- 人との接触を避ける:感染拡大を防ぐため、外出を控える。
予防方法・ワクチンの有無
現在、RSウイルスに対する一般的なワクチンはありませんが、高リスクの乳児に対しては「パリビズマブ(抗RSウイルス抗体製剤)」が予防策として使用されることがあります。
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前には手をしっかり洗う。
- アルコール消毒:接触感染を防ぐために手指を消毒する。
- 換気を行う:室内の空気を入れ替え、ウイルスの滞留を防ぐ。
- マスクの着用:感染の広がりを防ぐため、特に風邪の流行期にはマスクを使用する。
- 健康管理を徹底する:バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がける。
RSウイルスは何度も感染する可能性があるため、日常生活での予防が重要です。
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