うっ血性心不全とは?|桜本町・南区の循環器内科が解説
はじめに
うっ血性心不全は、心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなることで起こる重篤な疾患です。息切れやむくみといった初期症状から、脳梗塞やくも膜下出血といった命に関わる合併症を引き起こすリスクも高く、早期の発見と適切な管理が重要とされています。とくに高齢化の進む日本において、心臓の慢性的な疾患はますます身近な問題となっており、地域医療機関での予防的アプローチや継続的なフォローが求められています。
本記事では、うっ血性心不全の基礎知識から、脳梗塞との関係性、そして心臓リハビリテーションを含めた再発予防の重要性について解説します。南区や桜本町周辺で内科や循環器内科をお探しの方に向け、地域密着型の医療機関としての植谷医院の取り組みもご紹介します。
うっ血性心不全とは何か?
心不全の一種としての特徴
うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、体内に血液が滞ってしまう状態を指します。「うっ血」とは、血液の流れが悪くなり、静脈に血液がたまる状態のことです。この結果として肺に水がたまって息苦しさを感じたり、下肢にむくみが現れたりします。
一般に「心不全」という言葉は「心臓が止まる状態」と誤解されがちですが、実際には「心臓の働きが不十分な状態」の総称です。慢性心不全の一形態として、うっ血性心不全は多くの患者に見られる病態です。
出典:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000202/
代表的な原因疾患
主な原因には、心筋梗塞や高血圧、心臓弁膜症、心筋症、頻脈性不整脈などがあります。とくに高血圧は心臓に長期的な負荷をかけ、左室肥大を引き起こし、最終的に心機能が低下する原因となります。また、過去に心筋梗塞を経験した方は、心臓の一部が壊死し、その後のポンプ機能が落ちてうっ血性心不全に至るリスクが高まります。
出典:厚生労働省「うっ血性心不全」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1k05.pdf
うっ血性心不全と脳梗塞・くも膜下出血のリスク
血栓形成と脳梗塞リスク
うっ血性心不全が進行すると、心臓内で血液の流れが遅くなり、血栓ができやすくなります。この血栓が脳に飛んで詰まると、「心原性脳塞栓症」と呼ばれる脳梗塞を引き起こすことがあります。とくに心房細動という不整脈を併発している場合、血栓の形成リスクは顕著に上昇します。
くも膜下出血との関係
くも膜下出血は、脳の動脈瘤が破裂することで起こる脳出血の一種で、高血圧が大きな要因となります。うっ血性心不全では体液バランスの調整が乱れ、血圧が不安定になることがあるため、くも膜下出血の発症リスクが間接的に高まる可能性も否定できません。
出典:NCVC(国立循環器病研究センター)「心不全とは」
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
うっ血性心不全の症状と診断
よくある症状
- 息切れ(階段の昇降時や夜間に悪化)
- 下肢や足のむくみ
- 倦怠感、疲れやすさ
- 夜間頻尿
- 咳、喘鳴(とくに横になると悪化)
初期段階では風邪や加齢と見間違えられやすく、見過ごされがちです。
診断方法と検査
- 心電図や胸部レントゲン検査
- 心エコー(心臓超音波)によるポンプ機能の評価
- BNP・NT-proBNPといった血液マーカーの測定
- 必要に応じて心臓カテーテル検査
- 地域での一次医療機関における迅速な判断が、重症化を防ぐ鍵となります。
心臓リハビリで再発予防
心臓リハビリテーションとは
心臓リハビリは、心筋梗塞や心不全などを経験した患者に対して行われる包括的な再発予防プログラムです。医師、看護師、理学療法士、栄養士、薬剤師などが連携し、身体的・心理的な回復をサポートします。
保険適用の条件
以下の疾患が対象となり、医師の判断で保険適用が可能です。
- 急性心筋梗塞
- 狭心症
- 開心術後
- 慢性心不全 など
対象患者は最大150単位(およそ3ヵ月)のプログラムを保険診療で受けることができます。
実施期間と内容
- 運動負荷試験による安全評価
- 有酸素運動(自転車漕ぎ、トレッドミル歩行など)
- 心理ケアや服薬指導
- 栄養相談(減塩・体重管理など)
出典:日本循環器学会「心血管リハビリテーションガイドライン2021」
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Makita.pdf
名古屋・南区で心臓病の運動療法を受けるには
心臓リハビリテーション(以下「心臓リハ」)は、心不全や心筋梗塞といった循環器疾患を経験した患者さんに対して行われる、医学的根拠に基づいた再発予防の総合プログラムです。運動療法を中心に、栄養管理や心理的支援、服薬指導などを包括的に行うことで、患者さんのQOL(生活の質)向上を目指します。
心臓リハを受ける医療機関を選ぶポイント
心臓リハを継続的に行うためには、次のような点に注目して医療機関を選ぶことが大切です。
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循環器専門医が在籍しているか
専門医によるリスク管理や評価が安全なプログラム運営には不可欠です。 -
運動療法設備が整っているか
トレッドミルやエルゴメーターなど、段階的な運動を行うための機器があるかを確認しましょう。 -
多職種チームによる指導体制があるか
医師だけでなく、理学療法士・管理栄養士・看護師・薬剤師などとの連携が不可欠です。 -
保険診療での対応が可能か
外来での心臓リハは、保険適用のもと週2〜3回程度、3ヵ月間まで受けられることが一般的です。 -
アクセスのしやすさ
特に通院でのリハビリを考えると、近隣のクリニックや駅近の施設が望ましいです。
地域医療に根ざした植谷医院の取り組み
植谷医院は、桜本町駅出口すぐという利便性の高い立地にある、地域密着型のクリニックです。南区を中心に、内科・小児科・循環器内科を幅広く診療しており、心不全や高血圧、狭心症などの慢性疾患に対しても、丁寧なフォローアップを行っています。
当院では以下のようなサポート体制を整え、心臓病を持つ患者さんの安心な日常生活を支えています。
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循環器専門医による個別診療と薬物治療
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心臓病の早期発見に向けた心電図・心エコーの常時実施
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心臓リハ導入が必要な患者には、二次医療機関とのスムーズな連携紹介
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生活指導や家族支援も含めた総合的ケア
また、患者さん一人ひとりのライフスタイルや希望に寄り添い、リハビリの意義や方法について丁寧に説明することを大切にしています。心不全は再発しやすい疾患であるからこそ、通いやすく、相談しやすい地域クリニックの役割は非常に大きいと考えています。
再発を防ぐ生活習慣のポイント
うっ血性心不全の予防や再発防止には、適切な生活習慣の確立が欠かせません。薬物療法だけに頼らず、患者自身が主体的に健康を管理することが、長期的な安定につながります。
1. 適度な運動を継続的に行う
心臓リハで得た運動習慣を、日常生活に無理なく取り入れることが重要です。特に以下のような有酸素運動が推奨されます。
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ウォーキング(1日30分を目安に、週5日程度)
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軽い自転車こぎやストレッチ(筋力維持と血流促進のため)
息切れやめまいがある場合は無理をせず、医師の指示に従って運動強度を調整しましょう。
2. バランスのとれた食生活を意識する
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減塩(1日6g未満)
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高カリウム食(野菜・果物など)で水分バランスを調整
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動物性脂肪や加工食品を控える
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過度なアルコール摂取の制限
特に塩分の摂りすぎは血圧上昇やむくみの原因となり、心臓に負担をかけます。
3. 定期的な診察と検査を継続する
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心エコーや血液検査(BNPなど)による状態確認
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薬の服薬状況や副作用のモニタリング
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体重・むくみ・息切れなどのセルフチェック
ちょっとした体調の変化も、心不全再発のサインであることがあります。体調日記をつける習慣も有効です。
4. 家族や周囲の協力を得る
病気の理解とサポート体制は、患者さんの精神的安定にもつながります。
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通院時の付き添い
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食事の調整や生活の見守り
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異変時の早期対応(夜間の呼吸苦、急な体重増加など)
患者さん一人での生活改善には限界があります。周囲との連携が、再発予防の土台になります。
よくある質問
Q1. うっ血性心不全と言われましたが、すぐに入院が必要ですか?
A. 症状の重さによります。息苦しさやむくみが強い場合は入院が必要なこともありますが、軽症であれば外来での治療や生活改善でコントロールできる場合もあります。医師の指示に従い、無理をせず生活してください。
Q2. 心臓が悪いと診断されるのが怖くて受診をためらっています。
A. 心疾患は、早期発見・治療により、症状の進行を防ぐことができます。不安なことがあれば、まずは相談だけでも大丈夫です。病気の予防や日常生活での注意点を一緒に考えていきましょう。
Q3. 家族に心不全の患者がいます。私にできるサポートはありますか?
A. はい。通院の付き添いや薬の管理、体調の変化に気づいてあげることは大きな支えになります。また、減塩などの食事制限を家族全体で取り組むと、患者さんの負担も減ります。気になることがあれば医師にご相談ください。
まとめ
うっ血性心不全は、単なる心臓の不調ではなく、脳梗塞やくも膜下出血といった深刻な合併症を引き起こす可能性がある病態です。しかしながら、早期の診断と適切な管理、そして心臓リハビリテーションによる再発予防を行うことで、QOL(生活の質)を大きく改善することができます。
植谷医院では、南区・桜本町地域の「かかりつけ医」として、発熱外来を含めた内科・小児科・循環器診療を通じ、地域住民の健康を支える医療を実践しています。心臓の不調や生活習慣病が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
執筆者:
植谷医院 院長 植谷忠之(うえたに ただゆき)
日本内科学会認定医
日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会専門医
愛知県難病指定医(内科・循環器内科)
AHA ACLSプロバイダー・BLSプロバイダー
日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士
日本心血管インターベンション治療学会