A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌感染症)について
感染症の概要
A群溶血性連鎖球菌(Group A Streptococcus, GAS)は、咽頭炎や扁桃炎を引き起こす細菌の一種です。一般的には「溶連菌感染症」として知られており、特に小児に多く発生します。咽頭炎のほか、猩紅熱(しょうこうねつ)や劇症型溶血性レンサ球菌感染症(いわゆる「人食いバクテリア」)など、さまざまな疾患の原因となることがあります。
適切な抗菌薬による治療で多くの場合は速やかに回復しますが、合併症を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
感染経路
A群溶血性連鎖球菌は、主に飛沫感染と接触感染によって広がります。
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみによって飛び散る細菌を吸い込むことで感染
- 接触感染:細菌が付着した手や物を介して口や鼻に触れることで感染
また、傷口から侵入すると「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」や「丹毒(たんどく)」などの皮膚感染症を引き起こすこともあります。
潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は1~5日程度と比較的短いです。
症状
溶連菌感染症の主な症状は、以下の通りです。
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咽頭炎・扁桃炎の症状
- 突然の高熱(38~40℃)
- 強いのどの痛み(嚥下痛)
- 扁桃腺の腫れと白い膿(膿栓)
- 首のリンパ節の腫れ
- 頭痛、倦怠感、腹痛
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猩紅熱(しょうこうねつ)
- 上記の咽頭炎症状に加え、全身に赤い発疹
- いちご舌(舌が赤くブツブツした状態)
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皮膚感染症
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん):皮膚の深い部分に炎症が生じる
- 丹毒(たんどく):顔や手足の皮膚が赤く腫れ、高熱を伴う
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
- 高熱、血圧低下、意識障害
- 四肢の壊死や多臓器不全を引き起こし、非常に危険(致死率が高い)
主な合併症・注意すべき合併症
A群溶血性連鎖球菌の感染後、以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 急性リウマチ熱(まれ):心臓弁や関節に炎症を引き起こし、長期的な影響を及ぼす
- 急性糸球体腎炎:腎臓に炎症を引き起こし、血尿やむくみが現れる
- リウマチ性心疾患:心臓の弁に障害が残ることがある
- 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS):急激に進行し、多臓器不全を引き起こす(致死率が高い)
治療
A群β溶血性連鎖球菌感染症は、**抗菌薬(抗生物質)**で治療可能です。
- ペニシリン系抗菌薬(アモキシシリンなど) → 第一選択薬
- セフェム系抗菌薬(セファレキシンなど) → 代替薬
- マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシン) → ペニシリンアレルギーのある人に使用
抗菌薬は通常10日間服用することが推奨されており、途中でやめると再発のリスクが高くなります。
療養上注意すべき点
- 安静にする:発熱がある間はしっかりと休む
- 水分補給をする:のどの痛みが強い場合でも、脱水を防ぐためにこまめに水分をとる
- 食事は柔らかいものを:のどの痛みがある場合、刺激の少ない食べ物を選ぶ
- 手洗い・うがいを徹底:感染拡大を防ぐために、こまめに手を洗い、うがいを行う
予防方法・ワクチンの有無
現在、A群溶血性連鎖球菌に対するワクチンは存在しません。そのため、以下のような予防策が重要です。
- 手洗い・うがいの徹底:外出後や食事前、トイレの後に手をしっかり洗う
- 飛沫感染対策:感染者との距離を保ち、咳エチケットを守る
- 感染者との接触を避ける:特に家庭内での感染防止が重要
- 定期的な環境消毒:ドアノブやテーブルなど、よく触れる場所を清潔に保つ
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