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脳梗塞(脳卒中)

[2021.12.08]

脳梗塞(cerebral infarction/stroke)とは、脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になる事をいう。

 

脳梗塞の概要

脳梗塞は、脳に栄養や酸素を供給する動脈のが詰まっため脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、その状態がある程度の時間続いた結果、その部位の脳組織が壊死(えし 体の組織の一部が死んでしまうこと)してしまったものをいいます。

現在では脳梗塞は以下のように分類されています。

(1)脳塞栓症(のうそくせんしょう)

 心房細動(しんぼうさいどう)や心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)などのために心臓のなかに血栓と呼ばれる血液のかたまりができて、それが脳に流れてきて詰まった状態です。 脳梗塞の場所に出血を合併することが多く命に関わったり寝たきりになるような重症脳梗塞になりやすいタイプです。

(2) アテローム血栓性脳梗塞

 高血圧・糖尿病・脂質異常・喫煙などが原因となって脳の動脈や脳につながる頸動脈の壁にアテローマと呼ばれる壁の厚くなった部分ができて中にコレステロールや白血球の一種がたまり膨らんでくることをアテローム性動脈硬化と呼びます。その部位で血管が詰まってしまったり、血流が悪くなったり、またはそこにできた血栓がはがれて流れていき、さらに先端の脳の血管の一部に詰まってしまう状態です。 脳梗塞になる前に一次的に手足に力が入りにくくなったりしゃべりにくくなったりする症状(一過性脳虚血発作)が他のタイプより起きやすいとされています。

(3)ラクナ梗塞

 主に加齢や高血圧などが原因で、脳の深部にある直径が1mmの2分の1〜3分の1くらいの細い血管が詰まり、その結果直径が15mm以下の小さな脳梗塞ができた状態です。

症状

脳梗塞の主な症状には次のようなものがあります。

片側の麻痺

手足など体の一部に力が入らなくなったり思ったように動かせなくなることを麻痺といいます。多くの場合は、片方の上肢・下肢・顔面が麻痺しこれを片麻痺と呼びます。ただし、脳幹梗塞では顔面と四肢で麻痺側が異なる交代性麻痺になることもあります。顔面の麻痺により片側の口角が上がらなくなります。

感覚障害・異常感覚

体の片側の感覚が鈍くなる感覚障害やしびれや痛みなどの異常感覚を生じます。

言語障害

単語が思い出せなくなったり、文章が構成できなくなるように思ったような言葉が出てこなくなったりする失語症やろれつが回らなくなり言葉をうまく発音できなくなる構音障害が生じます。

片側の失明

痛みのない一眼の視力消失、しばしば「カーテンがさがる」と表現されます。

運動失調

麻痺がはっきりしなくても平衡機能が悪化しまっすぐ歩けなくなったり、距離の見当をつけたり細かい操作ができなくなる障害です。

脳梗塞の初期症状を疑うFASTと呼ばれる簡単なテストがあります。

F(フェイス・顔)

笑ってみる、「イー」と言ってもらい口角を上げてみる動きをしてもらってみましょう。顔は片側が麻痺すると頬が下がったり、口が閉まらなくなってよだれが出たりします。

A(アーム・腕)

両腕をまっすぐ前に突き出してみます。脳梗塞の初期症状で片麻痺が起こっている場合、動きがちぐはぐになったり、片側が垂れ下がる特徴があります。

腕は全く動きがなかったり、動きの途中で急に力が抜けたりします。

S(スピーチ・ことば)

自分の住所や名前、簡単な例文を繰り返してもらってみましょう脳梗塞で言語障害や口・のどの麻痺が起こっているかどうかがわかります。はっきりとろれつが回っているか、周りの人のいうことを患者が理解できているかを調べます。

T(タイム・時間)

テストで脳梗塞が疑われた場合は速やかに救急車を呼んで下さい。脳梗塞は時間がたつにつれて脳の損傷部位が広がるだけでなく、脳内で詰まった血管が破れ、出血してしまう危険が増えていきます。

また脳の血栓を溶かす治療は発症から時間がたつとできなくなってしまいます。

診断

脳梗塞の診断は病歴や症状、神経学的診察に加えCT等の画像診断で行われます。発症早期で血栓溶解療法が可能であれば後遺症をかなり軽減させることが可能ですのでCTやMRIを追加して迅速かつ正確に診断することが必要です。

治療

脳組織に血液を供給する血管が完全に詰まってしまうと脳梗塞の中心部は約1時間くらいで梗塞になってしまいますが、その周囲の部分(ペナンブラと呼ぶ)は数時間はまだ生きていて、ふたたび血流が回復すれば機能を回復することも可能です。しかし詰まったまま経過すると周囲の組織も徐々に壊死に陥り、時間とともに梗塞は少しずつ大きくなっていきます。 血流は自然に回復する場合もありますが 適切な時期に血栓を溶かすような薬を使って血流を回復させることも可能です。

 しかし詰まってから3〜4時間以上たってしまうと、詰まった血栓をせっかく溶かしても、梗塞となり死んでしまった組織に大量の血液が入り込むので、部分的に出血を起こして出血性梗塞になることもあるのです。 ですから脳梗塞ではなるべく早く、できれば発症して3時間以内に治療が開始できるよう、すぐに専門医のいる病院に患者さんを運んでください。

 血栓を溶かすような薬(血栓溶解療法)に加え最近ではカテーテルといった細い管や細いワイヤーを直接脳の血管に入れて血栓を除去する方法(脳血管内治療・血栓回収療法・血栓吸引療法)があります。

このような治療に加え脳のむくみをとる薬や抗血栓薬(血栓の拡大・再発を予防する)、脳保護薬(壊死に陥った組織や周囲の組織を保護する薬剤)などがあり、状況に合わせて治療に用いられます。

 今は、設備の整った病院にかなり早期に入院した患者さんでは、脳梗塞発作そのもので亡くなる人は以前に比べかなり減ってきましたが半数近くの人は残念ながら寝たきりになったり車椅子の生活を余儀なくされたり、何らかの後遺症で悩むことになります。このため後遺症の軽重を問わず、脳梗塞によって失われた機能の回復をはかるため、またその再発防止をはかるためにも、さまざまなレベルのリハビリテーション行っていく必要があります。

予防

脳梗塞の原因には高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病と心房細動と呼ばれる不整脈や運動不足や喫煙などの生活習慣があげられます。特に心房細動になっている方や今はなっていなくても過去に指摘された方は心源性脳塞栓による脳梗塞を起こしやすく抗血栓薬が必要となる場合がります。また高血圧や糖尿病の方は食事療法や運動・薬物治療できちんと管理することが脳梗塞予防のために必要です。

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