心不全(うっ血性心不全)
心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。
心臓の機能が低下して、体に十分な血液を送り出せなくなった状態を「心不全」と呼びます。心臓のポンプ機能が低下し、肺や全身に必要な量の血液を送り出せなくなるため、体がだるくなったり体を動かすと息苦しくなったりします。進行すると安静にしても息苦しさが続くため救急車で病院に運ばれることもあります。
利尿剤・血管拡張薬・β遮断薬・降圧剤などを使い症状をコントロールし心機能を維持できるような治療を行います。
日常生活での症状(息切れ・むくみなど)・体重(体の水分量を反映しています)・血圧(家庭での血圧測定が重要です)・血液検査・心電図・心臓超音波検査などの情報を元に薬剤の種類や量を調節していくことが重要です。
虚血性心疾患(冠動脈疾患)・不整脈・心臓弁膜症など心臓の機能を悪化させる要因に直接治療を行う場合もあります。
また塩分制限や運動など食事や日常生活の管理が非常に重要です。特に糖尿病・腎不全(慢性腎臓病)・サルコペニア(全身の筋力低下)などさまざまな疾患を抱えた高齢の方が多く栄養や運動(心臓リハビリテーション)、服薬指導などさまざまな専門家と共同して患者さんの治療や生活の支援を行っていくことが重要と考えられています。
日常生活での注意点
日常生活全般
心不全を悪化させない日常生活を送ることが大切です。まず自分の病気の状態についてよく理解し、毎日の体重測定、塩分や水分の制限、服薬等、病院で指示された自己管理をしっかり続けることが何よりも重要です。また、症状が悪化したときの対処法も身につけておく必要があります。高血糖、高血圧、脂質異常等で心臓に負担をかけないよう、生活習慣を管理できれば、症状が改善することも期待できます。
一人では管理が難しい場合にはご家族の力を借りたり、高齢の方の場合には生活支援サービス(民間、公的を問わず)を利用する等の対策を検討しましょう。
服薬
心不全の患者さんにとって、薬による治療はとても大切です。患者さんの症状や心臓の機能の状態に合わせて、いろいろな種類の薬が処方されます。処方された薬は、医師や薬剤師の指示通りに、正しく服用しましょう。
副作用が怖い、あるいは体や心臓の調子が良いからといって、自己判断で薬をやめてはいけません。病状が悪化する最も多い原因のひとつが、患者さんの自己判断による薬の中止や、飲み方の変更によるものです。
食事(塩分と水分)
塩分は、からだに水分がたまりやすくしたり、動脈硬化を進行させたりします。心臓の機能が低下している患者さんは特にからだに水分がたまりやすいため、心臓へ負担を軽減するために、塩分と水分を制限します。また、糖尿病や高血糖がある場合や、肥満により心臓に負担がかかっている場合は、カロリー制限も必要になります。何をどれだけ制限するかは、心不全の状態によって変わります。医師や栄養士の指示に従い、しっかりと食生活を管理しましょう。
排泄
尿量や便の回数等、変化がないか毎日チェックしましょう。尿量や回数が減った、あるいは下痢や便秘等、便通にいつもとは違う状態がみられたら、医師に相談しましょう。特に便秘でいきんでしまうと、急に血圧が上がり心臓に負担をかけますので、十分に注意が必要です。
また、冬場の部屋とトイレの温度差も、血圧の上昇や心臓への負担につながりますので、暖房や衣服で調節することも大切です。
体重
心臓の機能が弱まってくると、からだに水分がたまりやすくなり、その結果体重が急に増えてしまいます。体重は毎日だいたい決まった時間に測ることが重要です。2~3日で2㎏以上の体重が増えるようなことがある場合は、早めに医師に相談しましょう。
入浴
入浴時、湯船のお湯が熱すぎたり、深くつかりすぎたりすると心臓に負担がかかります。ぬるめのお湯(40~41度)に鎖骨の下あたりまでつかり、10分以内にとどめましょう。温かい部屋から急に冷えた浴室に入ると、血圧が急に上がるため危険です。入浴前には、脱衣所や浴室等を温かくしてから入りましょう。
洗髪する時は、心臓を圧迫するような前かがみの姿勢ではなく、シャワーを使うようにしましょう。
運動(心臓リハビリテーション)
安定期であれば適度な運動は、日常生活中の症状を改善し、からだの機能を維持するためにも有効です。心臓や全身の状態に応じた運動強度の運動を定期的に実施することにより息切れや全身倦怠感などの心不全症状を改善し心不全入院や死亡リスクを減らすことが証明されており、心不全に非常に重要な治療手段となります。また、過度な安静はかえって調子を悪くすることがわかっています。ただし、心不全が急に悪化したときなど、病状によっては運動してはいけない場合があります。適切な運動の時期や量についは必ず医師の指示に従いましょう。
睡眠と休息
心臓は24時間365日絶えず働き続けています。しかし、睡眠中は全身で必要とする血液が低下するので、心臓も最低限の働きをして休息します。
心臓の負担を取るためにも、良質な睡眠をとることはとても重要です。心不全の症状による息苦しさなどで眠れないことがある場合は、すぐに医師へ相談しましょう。
禁煙
喫煙による動脈硬化の進行だけでなく、あらゆる面で心臓に負担をかけ、心不全を悪化させます。
禁煙がなかなかできない方は、専門の医師(禁煙外来)に相談されることをおすすめします。
通院と心不全の管理
定期的に受診し、体重や血圧、脈拍数や日常生活中の症状を確認し様々な薬剤の用量を調節することが必要です。また定期的に心電図検査・胸部レントゲン検査・心臓超音波検査・血液生化学検査などで心臓やうっ血の状態を評価します。
関連項目:
心臓リハビリテーション(運動指導)のご案内
心臓超音波検査のご案内
心筋梗塞・心不全・肺塞栓症院内迅速検査
心電図検査のご案内
胸部レントゲン検査のご案内
糖尿病
慢性腎臓病(慢性腎不全, CKD)
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
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うっ血性心不全の薬物治療について
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